自転車あおり運転の罰則で逮捕もあり!?

交通に関する情報

2020年6月からは、道路交通法が改正され、自転車のあおり運転も規制の対象となりました。今回はそんな自転車をテーマに、自転車の事故で加害者となってしまった場合、どのような罪に問われるのかを説明します。

道路交通法の改正で自転車の「あおり運転」も厳罰化

2020年6月から施行された改正道路交通法では、これまで法的に定義されていなかったあおり運転を「他の車両等の通行を妨害する目的で、一定の違反行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるもの」(妨害運転)反則は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されることになりました。さらに、妨害運転により、高速道路において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合は、「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されることになりました。
(妨害運転罪、道路交通法第117条の2第6号、同法第117条の2の2第11号)。「一定の違反行為」の具体例としては、幅寄せや急ブレーキ、執拗(しつよう)なクラクションなどがあります。
自転車のあおり運転についても、妨害運転罪が適用されます。また、妨害運転罪に当たる行為をすると、講習を受けるべき旨の命令が課されたり、受講命令に従わなかった場合は刑事罰が科せられることにも注意です。
自転車は、自動車と違い運転免許制をとっておらず、誰でも乗ることができます。自動車に比べれば危険の小さい乗り物だと思われていましたが、近年では自転車が加害者となって事故を起こしたり、自転車運転者が自動車運転者を威嚇したり、進路妨害を行うなどして危険を生じさせるケースも見られるようになりました。
こうしたことから、道路交通法の改正により、自転車の運転者があおり運転をした場合も妨害運転罪の適用対象としたり、自転車運転者講習を受けるべき旨の命令を課したりすることで、安全な交通を確保しようしたものと考えられます。
自転車運転者講習(道路交通法第108条の2第1項第14号(改正法施行後は第15号)。)を受けるべき旨の命令が課される可能性があります(道路交通法第108条の3の4(改正法施行後は同法第108条の3の5))。自転車運転者講習の受講時間は3時間(道路交通法施行規則第38条第14項第4号)、料金は6000円です。これに従わない場合、5万円以下の罰金となります(道路交通法第120条第1項第17号)。対象年齢は14歳以上となっています。

自転車運転者講習の受講命令が課される可能性がある「危険行為」

自転車運転者講習の受講命令が課される可能性がある行為としては、あおり運転以外にも、「危険行為」とされる行為が規定されています。具体的には、あおり運転以外に、以下の14の項目が規定されています。

【自転車の危険行為】

  • 信号無視
  • 行禁止違反歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)
  • 通行区分違反
  • 路側帯通行時の歩行者の通行妨害
  • 遮断踏切立入り
  • 交差点安全進行義務違反等
  • 交差点優先車妨害等
  • 環状交差点安全進行義務違反等
  • 指定場所一時不停止等
  • 歩行通行時の通行方法違反
  • 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
  • 酒酔い運転
  • 安全運転義務違反

自転車を運転した場合にあおり運転(妨害運転)

たとえば、車間距離を必要以上に詰める、ベルを執拗(しつよう)に鳴らす、後続車の前で急ブレーキをかける、後続車両を停止させる、無理やり割り込む、対向車線に飛び出す、などによって交通の危険を生じさせるおそれのある場合が該当します。
自転車であおり運転(妨害運転)をしてしまっても警察にばれないのではないかと思っている方もいるかと思います。しかし、最近では、町中に防犯カメラも増え、また、ドライブレコーダーも普及しています。こうした映像の中にあおり運転(妨害運転)が映っている場合は、証拠物として警察に提出され、後日、警察の捜査の対象にされる可能性もあります。

自転車事故で加害者になったら

自転車事故でも相手に怪我をさせたり、時には死亡させたりしてしまうこともあります。特に歩行者にぶつかった場合は、加害者も動転して何をしていいかわからない場合もあるでしょう。
しかし、事故直後の対応はとても重要です。自転車に乗る以上、事故を起こす可能性は常にあるわけですから、どういった対応をすべきか、その対処方法もしっかりとおさえておきましょう。ここでは、自転車事故発生直後に加害者がすぐにやるべきことを説明します。
負傷者の救護(道路交通法第72条)
自転車事故でけが人が発生した場合、まず大切なのは負傷者の救護です。路上など危険な場所である場合は安全な場所に移動させつつ、けがや意識の状態などを確認しましょう。
救急車を呼ぶ必要があれば急いで呼びましょう。
また、事故による二次被害の防止のため、周囲に事故の発生を伝えるなどの危険防止措置を取る必要があります。被害者の安全が確保できたら、警察に連絡しましょう。被害者の救護と警察への連絡は、道路交通法上で加害者の義務として規定されています。したがって、これらを行わなければ道路交通法違反となります。

保険の確認

被害者への賠償のために利用できる保険内容を確認します。
自転車を運転していて事故を起こすと、自動車を運転していた場合と同様、相手に生じた損害を賠償しなければなりません(民法第709条等)。そして、相手方が歩行者であった場合には、相手方が大きな怪我を負う可能性もあり、死亡したケースも実際に報告されています。そうすると、加害者側が支払うべき損害賠償額も高額になるおそれがあります。自転車事故の際に利用できる保険としては、自転車利用者向けの賠償責任保険、火災保険、傷害保険、共済、会社等の団体保険、クレジットカードやTSマークに付帯する保険などがあります(藤沢市ホームページ参照)。自転車そのものについて保険に入っていなくても、自動車の任意保険に自転車事故対応の特約がついていることもあります。また、本人が加入していなくても家族が加入している保険で使用できるものがある場合もあります。

被害者へのお見舞いや謝罪

加害者となった場合には、なるべく早く被害者のお見舞いに行ったり、謝罪の手紙を渡したりすることが望まれます。特に、保険会社が対応してくれる場合は、保険会社の担当者に手続きをすべて任せることができるため、ついつい被害者へのお見舞いを忘れてしまう方もいます。しかし、被害の実態は、実際に会ってみないとわからないこともあります。
また、被害者の中には、たとえしっかりとした賠償を受けても、加害者本人の謝罪がない。
事故直後の段階できちんとした謝罪がないと、そのことがわだかまりとして残り、示談交渉がうまくいかないこともあります。また、示談ができず、被害者の処罰感情が強い場合、刑事上の手続きにおいても加害者にとって不利に働く可能性があります。
そうしたリスクを軽減するためにも、加害者になった場合はなるべく早く被害者のお見舞いに行ったり、謝罪の手紙を渡したりすることが大切です。なお、場合によっては、被害者がお見舞いを拒否する場合もありますが、それでも、加害者側としては、きちんとしたお見舞いと謝罪の意思を伝えておくことが大事です。

自転車事故で逮捕

自転車を運転していて加害者になってしまった場合、刑法上の過失致死傷罪や重過失致死傷罪、道路交通法違反によって刑事責任を追及される可能性があります。
警察が捜査を開始した場合、刑事訴訟法上「被疑者」という立場に置かれます。在宅のままで取り調べが行われる場合もありますが、悪質な場合は、逮捕されて勾留に至る場合もあります。
いずれにしても、最初は警察、次に検察による取り調べが行われ、捜査結果や被害者の状況などを総合的にみて、検察官が起訴すべきかどうかを判断します。起訴された場合は、刑事裁判に移行し、被疑者から「被告人」という立場に変わります。刑事裁判では証拠の取り調べがされ、裁判官による事実の認定が行われます。裁判官は、認定された事実を基に刑罰法令を適用し、量刑を判断します。刑の種類には、罰金刑や懲役刑などがあり、懲役刑の場合は執行猶予が付く場合と付かない場合とがあります。

 

まとめ

近年、自転車で相手に怪我をさせてしまった事故が裁判にまで発展し、高額な損害賠償請求に至ったという案件も増えています。仮に被害者への賠償に利用できる保険に加入していなければ、全額を自腹で負担しなければなりません。また、相手への賠償責任とは別に、刑事責任の捜査が開始され、警察による取り調べなどの対応をしなければならないこともあります。これらの問題に本人だけで対応するのは大変なことです。弁護士に依頼すると示談交渉をすべて任せることができて、精神的かつ物理的な負担がかなり軽減します。刑事手続についても、どの段階でどんな主張立証を行うべきか、具体的な説明が得られます。
交通事故が発生した場合、被害者に大きな負担が生じることはもちろんですが、加害者にも大きな負担が生じます。加害者の中には、交通事故を起こしてしまったという後悔や不安で苦しい時間を過ごす方もおられます。その場合は弁護士さんへのご相談をお勧めします。

一番は、加害者、被害者にならい様に心にゆとりを持ち、ゆずりあいも必要と思います。

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